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​和紙写真と表具文化との提携と経緯について
掛け軸や屏風をはじめ、絵巻、襖絵、行燈、扇子まで含めて、大小様々なスタイルの日本の表装文化の保存や修復技術は、世界の美術シーンから注目されています。
和紙写真は日本の表具の伝統文化と融合することで、日本発の写真アートを世界に誇る産業にまで成長させる可能性を、日本和紙写真協会は実感しています。
この実感に至るまでの経緯と、現在の状況を解説します。

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掛け軸に表装された写真はアートとして海外で大人気

日本食や日本のファッションの高い評価を得て、海外では日本の文化に興味を持つ方が増えています。

富裕層の中には、室内に畳の和室や床の間を造作することがブームになっているようです。

掛け軸は防虫効果のある匂い袋の入った桐箱(さらに紙箱に入る)に収納できますので、コンパクトな保存性も人気の理由のようで、美術品としてコレクションする対象になっているのも嬉しいです。

​現在もロシアのミュージアムで継続されている展覧会でも、掛け軸は大人気で、きちんとした美術品としての評価を獲得しています。

海外の著名写真作家の中には、掛け軸や屏風の作品制作を希望している方も大勢います。

写真データを日本に送ってもらうことで、日本で和紙写真を出力し掛け軸や屏風に表装し、海外に輸出できる体制づくりは急務だと考えています。

​美術品だけでなく、生活の中で使用できる調度品としての表装された和紙写真は、日本しかできないヒット商品となり得るでしょう。

パリでの国際写真展でのフランス婦人の一言が写真屏風誕生のヒントに

​会長の田中伸明がパリのルーブル美術館の地下スペースで開催された国際写真展Photo feverに参加したのは2016年。その会場に入場料を払ってやってきたフランス人のご婦人に「写真のパーティションを作ってほしい」という相談を受けました。

「室内の壁に絵画や写真を大量に飾ることが庶民の文化になっているヨーロッパでも、新築建築が難しい住宅難のパリ市内では、新たな展示スペースを確保するの、難しい」「床にダイレクトに設置できるパーティションであれば、パーティなどであき空間を美しく演出することができるし。余計なものの隠すこともできるし、普段は大切に畳んで収納することができる」というのは、その年配女性の主張でした。

彼女の言うパーティションというのは、日本では屏風と呼ばれていて、大小様々な形式があることを説明しました。

このことが発端となり、和紙写真に使用した大型屏風作品を誕生させアイディアがパリで誕生したわけです。

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​京都の表具文化との出会い

数年後、しばらくは東京で写真屏風のプランを模索してのですが、写真プリントを屏風仕立てを手掛ける会社があっても、本物の美術品としての写真屏風を制作してするプロジェクトとの出会いはありませんでした。

陶芸家の人脈を辿ることで国際的な活躍をしている京都の伝統工芸家との出会いが実現。

彼の意見で、写真プリントは、丈夫な手漉き和紙写真を使用。

彼の推薦で、徳島の阿波和紙のアワガミファクトリーをご紹介していただきました。

同時に京都の伝統工芸の伝統に培われた美術品としての屏風に表装するために、徳島の阿波和紙伝統産業会館(アワガミファクトリー)に​B倍サイズの特注の厚手和紙を発注し、半年の歳月をかけて、等身大の全裸写真の​巨大屏風作品は誕生しました。

 

※伝統工芸家の後押しがあって、偶然138カ国の美術館・博物館の関係者が一月間に渡り京都に集まる国際博物館会議ICOM国際大会のパビリオンに、完成した写真屏風と他の和紙写真作品を出展した。

​ロシアのオレンブルク美術館から、ロシアでの展覧会の要請を頂戴するという幸運を招いたのです。

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徳島にあった世界のアーティストが注目する和紙の巨大工房

アワガミファクトリーは徳島の吉野川市に存在する阿波和紙の総合プラントのブランドネームです。

手漉き和紙を制作する漉き師と呼ばれる職人たちの集団である阿波手漉和紙商工業協同組合。

竹和紙や建築部材と使用する総合的な和紙に工場生産ラインを有する富士製紙企業組合。

手漉き和紙の制作体験や資料・作品の展示する一般財団法人阿波和紙伝統産業会館。

この三つで構成されています。

組合の代表者であり、財団の理事長でもある藤森洋一氏は、 和紙産業の育成の業績を評価されて202年度の瑞宝単光章を受賞しています。

​また、海外での和紙をテーマにした講演活動もあって、様々なジャンルの海外アーティストにアワガミファクトリーのメジャーにした功労者です。

​多岐にわたる表具師の仕事

表具師の仕事は伝統に基づいた様式美によって多種多様です。

納品された和紙写真プリントを布や薄い和紙を何層にも支えることで構成される掛け軸。

屏風も大小様々な様式がありますが、木枠作り→木枠に紙でできた羽根(はね)貼っていく蝶番→骨縛り→みの貼り→空気の層を閉じ込めるみのおさえ→袋貼り→清貼り→蝶番(組み合わせ)→本紙貼り→裏紙→へりづくり→椽・金具打ちの仕上げと、複雑な工程は必要です。

日本の表具技術が素晴らしいのは、部材や接着剤や塗料なども天然素材を限定して使用していること。

​将来の修復作業を予知して制作作業を施しているので、劣化や変色などは極めて少ないことです。

こうした制作作業と並行して、桐箱、紙箱、布風呂、輸送用のケース、防虫乾燥剤(匂い袋)などを発注する作業。

​表具師は、様々な知識と伝統を深いレベルで理解している職人と呼ばれるスペシャリストなのです。

プリンティングディレクター郷司史郎氏の存在

一般財団法人阿波和紙伝統産業会館の理事でもあり、写真館を経営する郷司史郎氏は、アワガミファクトリーの和紙写真のプリンティングディレクターです。

アワガミファクトリーにてITシステム管理とアワガミ出力サービスにて和紙へのプリントを主幹。

和紙に関する知識と銀塩プリントの知識、プリンタ等のデジタル機器に関する 知識を活用し、国内外からのアーティストを対象としたデジタル印刷を行っています。

​彼の元を訪ねる海外のアーティストは切れません。

​日本和紙写真協会のWashigraphPhoto 作品を支えるキーマンです。

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​和紙の漉き師、表具師、プリンティングディレクターの3者が連携して写真作家を支える構図

写真家が撮影した写真を掛け軸や屏風に仕上げるために発注作業を手配しているわけではありません。​

日本和紙写真協会の会長である田中伸明が表具プラン全体をプロデュースしています。

①プロデューサーは、表具に掛け軸や屏風の決まり事を伺うことで、サイズ。仕様、梱包、発送方法、予算に基づいた制作プランを準備する。

プロデューサーは、制作プランをアワガミファクトリーのプリンティングディレクターに打診し、和紙の種類やサイズ、画像の出力方法を決定。

③プリンティングディレクターが和紙制作を漉き師らに指示することで、アワガミファクトリーでは和紙の制作を開始。

④写真家のデータをプロデューサーがPhoto Authoring。デザイン案にも基づき、プリンティングディレクターにデータを納品。

⑤プリンティングディレクターは、納品データを出力データに変換整備。

⑥完成した和紙用紙に、画像を出力。

⑦表具師に画像を出力された和紙写真を発送。表具師は表具作業を開始。

​⑧表具師は完成された表具作品をプロデューサーに納品。検品作業。

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