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写真家・画家 岡村 泰三個展

和紙写真展 気配の蜜

8年ぶりの個展をご案内申し上げます。もともとは絵画畑出身のキャリアを活かし、絵画の魅力の一つであるマチエールと、写真表現の中に見出せる東洋的な空間認識の融合を試みている昨今。

そんな実験的な近作と旅行ジャーナリスト時代のルポ的な旧作とを『気配』というキーワードでコンセプトメイキング。

会場:アイアイエー・ギャラリー

東京都中央区日本橋小伝馬町17-5 7ビル1F 03-6661-7170

アクセス:日比谷線・小伝馬町より徒歩4分、JR横須賀線・総武快速線・馬喰町駅より徒歩4分、都営新宿線・馬喰横山駅より徒歩4分、

 

会期/2024年7月16日(火)-21日(日) 12:oo〜19:oo、

最終日17:00まで。

作家は全日在廊

8年ぶりの個展をご案内申しあげます。

仕事として写真やカメラに関わるようになって早40年。

もともとは絵画畑出身で、写真はほぼ独学から始めたため、そのメリットとデミリットについてここ数年よく考えるようになりました。

90年代を中心とした雑誌全盛時代にフィルムカメラを携えて世界各地を撮影して回れたことは、背中を押してくれた時代的背景とも相まって、経験値の蓄積として意義ある特別な時間だった、とつとめて肯定的に考えています。

しかしその一方、写真という記録メディアについてまわる一過性の儚さ、あるいは時を経ると撮影された時代を背負ってしまう呪縛感など、絵画に比べると時に "不自由さとの葛藤" が生まれがちな写真の特異性に対しても無関心ではいられませんでした。

自ずと絵画を学んでいた頃のメンタリティを思い返すことが歳とともに多くなり、とりわけ絵画の世界ならではの、いわゆる絵肌 (マチエール) が伝える心模様や時間の重層性を、写真の中にも持ち込めないかといつしか悶々とする日々がはじまりました。

もちろんそんな誰もが考えそうな葛藤は今に始まったことではなく、写真史を紐解けば古くは絵画に自らにじり寄ろうとしたピクトレアリズム運動をはじめ、戦前戦後を通じてアートシーンに何度も登場してきたモノ派的な潮流の一つとも言えます。

そして近年のアートシーンに照らせば、デジタルの定着とまるで反語のように「写真は物質である」という認識が広く浸透してきていることも事実です。

では、改めて自分なりに写真と絵画の接点をどう捉え、どのように越境していけば新たな自由な表現世界が見えてくるのか・・・この難しい問いは、しかし例えば葛飾北斎がもし今も生きていたら、どんなチャレンジをしているか、なんて話に思いを巡らせてみると意外に近くにヒントがあることに気づかされます。

少なくともデジタルの優位性を否定せず、アナログとデジタルの間で遊び心を存分に解放していたはず。

当然、AIに対する否定的な意見など囁かれるはずもなく、そうとう実験的な作品を生み出し続けていたことでしょう。

僭越ではありますが、私もそんな気持ちで近作に取り組みつつ、今回はフォトジャーナリスト時代のルポ的な旧作とを「気配」というキーワードで束ねてみました。

「気配」の言葉に象徴される「気」の文化は、時代は変われど私たちの遺伝子の中に引き継がれる、外界に対する優れた認識のあり方だと思うからです。

​岡村 泰三

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